5月7日 夜 ACL戦後 広島市内にて
野々村 (以下:野) 「 おぅ 伸二」
小野伸二 (以下:伸) 「お疲れさまっす」
野 「今日のシドニーはダメだったなー」
伸 「そうっすね ウチのプレスが甘くて」
野 「まぁクラブ出来て まだ2年目だもんな」
伸 「ええ。 まぁこれからですよ」
野 「 ところでさ ウチに来るの 大丈夫だよな?」
伸 「なんすか 急に」
野 「いやさ なんつうか・・・最近 いろいろ不安なんだよ」
伸 「どうしたんですか なんかノノさんらしくないっすよ」
野 「だよな(苦笑)・・・ でも ほんと 不安なんだ」
伸 「 契約は大丈夫ですよ。 必ずコンサドーレに行きます」
野 「そっか。 そっか。 うん。 良かった。」
伸 「ほんと どうしたんすか? 随分 弱気じゃないですか」
野 「いやさー いろいろあるんだ 俺も」
伸 「 もし僕でよかったら 話し聞きますよ」
野 「・・・ ・・・。」
野 「 ・・・なぁ伸二 今日は 愚痴 聞いてくれるか? 」
伸 「 ええ。」
野 「 俺 社長になって1年半になるんだ。 その間 頑張ってきたよ 突っ走った」
伸 「 それはいろんな人から聞いてます。 だから僕も札幌に決めましたし」
野 「 ありがとうな。 だけど 全然 変わんないんだよ」
伸 「 変わんないって 何がですか?」
野 「集客とか サポーターの雰囲気とか サッカー熱みたいなものもな」
伸 「・・・」
野 「なんでだろうなー もっともっと盛り上がってほしいんだけどな」
伸 「 でも その内 盛り上がるんじゃないんですか ほら今年はW杯もあるし」
野 「 それがな 何か北海道の場合 ちょっと違う気がするんだ」
伸 「どう違うんすか?」
野 「 いや なんていうか パッと盛り上がるんだけど 長続きしないっていうか」
伸 「・・・」
野 「ぶっちゃけるとさ 今 コンサドーレ 調子 良くないんだよ」
伸 「・・・なんか そうみたいすね 一応 チェックしてますから」
野 「まぁそれはリーグ戦だから 良い時もあれば 悪い時もあるのは当然でさ」
伸 「そうですよね」
野 「そうなんだけど 悪くなった時のムードが なんか他と違うんだよ」
伸 「かなりムード 悪いんですか?」
野 「伸二は分かるよな 選手はスタジアムのムード 敏感に感じ取るだろ?」
伸 「 ええ 分かりますね 期待されてるとか そうじゃないとか 」
野 「 そういうのが 他と違ってて なんつうか・・・ 冷めてるんだ」
伸 「 冷めてる?」
野 「 ・・・そう。 冷めてるんだよな」
伸 「・・・」
野 「 去年 俺が社長になった時は すごく歓迎されたし 熱かったんだ
けど 今は潮が引くみたいな感じがしてる この1か月ぐらいで」
伸 「 そんな急に ですか?」
野 「 ・・・そうなんだ。 普通はさ 勝てなくて怒ったとしても 冷めないだろ?」
伸 「そうっすね」
野 「だけどウチの場合 ほんと冷めちゃうんだよな それがキツい」
伸 「 だとすると クラブは大変ですね」
野 「この前もさ 凄い安いクーポン出したんだ たけど あんまり入んなかったし」
伸 「・・・それは キツいっすね」
野 「前の監督 石崎さんだったんだけど その時も こんな感じになっちゃってさ 」
伸 「石崎さんって 山形とか柏の監督やってた石崎さんですか」
野 「 そう あの石さんでさえ 3年目ぐらいから元気なくしちゃったからな」
伸 「そうなんすか それはかなり強烈なネガティブオーラっすね(苦笑)」
野 「 いや冗談じゃなく この負のパワーはほんとに強烈だぞ」
伸 「・・・それでノノさん そんなに参ってるんだ」
野 「 今なら 石さんの気持ち 分かるよ」
伸 「 まぁでも元気出しましょうよ 社長が弱ってたらマズいですよ」
野 「皆の前では絶対 こんな事 言わないし 弱ってるとこなんて見せてないぞ」
伸 「そうでしょうね」
野 「 でさ それだけじゃないんだ サッカーの質もなかなか上がんない」
伸 「そうなんすか なんか去年はイイ感じで終わったみたいですけど」
野 「良くなりそうな雰囲気はあったんだけど 今は何か停滞してるって感じだな」
伸 「でもその辺は 勝てるようになれば変わるし 僕もそこは協力できますから」
野 「うん 頼むな。 俺はパスサッカーのチームにしたいんだ」
伸 「ちょっと時間 掛かるかもしれないけど 大丈夫ですよ」
野 「 期待してるよ 伸二はウチの救世主だからさ」
伸 「・・・」
野 「どうした? 深刻な顔して」
伸 「 俺は救世主じゃないですよ」
野 「 なんだよ それー」
伸 「 期待してくれるのは嬉しいけど 俺は救世主なんかじゃないですよ。
俺一人の力で 集客は背負えないし ムードなんて変えられるわけない
良いサッカーをするための手助けは出来るけど 救世主じゃないですから」
野 「 ・・・ 」
伸 「 ノノさんが今 キツい時なのは分かるけど そうじゃないと思うんですよ」
野 「 ・・・ ・・・ 」
伸 「 ノノさん 言ったじゃないですか “みんなで強くなろう” って」
野 「・・・」
伸 「 だったら それでいいじゃないですか!」
野 「・・・確かに」
伸 「 でしょ。キツい今だからこそもう一回 “みんなで” って気持ち持ちましょうよ」
野 「・・・そうだよな。 救世主を待つなんて 俺らしくないよな」
伸 「 そう。 それでこそ 野々村芳和ですよ」
野 「 ま まぁな」
伸 「 俺は ノノさんの所だから 行くんすよ」
野 「 それは分かってる 嬉しいし ありがたいよ」
伸 「 だから俺 やれる事は全部やります ノノさんの力になりますよ」
野 「 うん。 頼むな。 だけど 俺も やるよ。 全部 やる。 やり切る」
伸 「 そうっすね そうでなくちゃ」
野 「 今日はありがとな。 悪かったな 愚痴なんか聞かせて」
伸 「いい経験させてもらいました 社長の愚痴なんて普通 聞けないですからね」
野 「 まぁな。 俺も今はいろいろあって 弱気になってたよ」
伸 「 そういうノノさんが見れて 良かったすよ」
野 「もう絶対 見せないからな」
野 「 っていうか お前 社長に説教したな」
伸 「 あっ さーせん (笑)」
野 「 おいコラ 6月からそんな態度 取ったら・・・ おい 」
風のように逃げてゆく小野。
と そんな事が事があったかもしれない広島の夜である。