いざ 函館へ!
~最初にして最大の敵 現る!~
U子 「ゴクウよ おのれは おのれの人生を悔い改める気はあるのか?」
その質問はあまりにも唐突だった。
kazua「?U子さん ちょっと意味が分かりませんが… ってゴクウって誰?」
U子 「バカもの!己の罪を償う旅へ向うのじゃ 分かったかゴクウ!」
kazua「はぁ… まぁイイっすけど…」
U子 「では 今すぐ出発じゃ いざ函館へ!GOGO!」
この物語はkazuaがこれまでしでかした数々の罪を贖う(あがなう)旅の記録である
罪の大きさと同じ大きさの難敵が次々と立ちはだかり 旅の行方を阻む
そのひとつひとつと戦いながら 己を鍛え上げ 目的地を目指す
辿り着くのは天竺・函館か? はたまたリタイヤか?
札幌から函館へ。まさに西へ向う西遊記。旅の始まりである。
kazua「ところでU子さん どうやって函館まで行くの?」
U子 「うむ ちゃ~んと準備は出来ておる コレだ!」
と 取り出したのは一枚のパンフレット。
“激安!函館バスツアー!湯の川温泉2泊3日の旅!”
kazua「バ バ バスツアー!!! 大丈夫かいなバスって」
U子 「バカもの!これが一番安いんじゃ!
私らの旅は激安の旅と決まっておろうが!
それからな ひとつ言っておくことがある
この旅は険しいぞ 修行の旅じゃ 心してかかれ よいな」
kazua「あーそーですかー」
U子 「それと今からおまえはゴクウじゃ そして私を三蔵さまと呼べ」
kazua「あー 了解 」
何を血迷ったのか 函館旅行を西遊記とイメージしたらしい。
ゴクウ?三蔵?まぁいいさ。お供しますよ。楽しんじゃいますよ。
だいたい旅行なんてのは楽しくなくっちゃ意味がない。修行の旅?冗談じゃない。
オレは楽しむよ。美味いもん食って。観光して。温泉だー。楽しみだー。
ゴクウ「ところで三蔵さま 西遊記なら猪八戒と沙悟浄がおりませぬが?」
三蔵 「うむ それはツアーの集合場所へ行けば分かる」
三蔵の答えが理解できなかった。
集合場所に誰か仲間がいるのか?それとも加えるのか?
指定の場所へ着き 出発時間を待っていると ゾロゾロと人が集まり出す
ん?ん?んんー!! そこに集まってくるのは 50代~60代の男女
まさに 猪八戒と沙悟浄はかりだ。
なるほど。函館バスツアー それも湯の川温泉。しかも金曜朝8時出発。
この条件をクリアするのは おばちゃま軍団と定年後の夫婦だけだ。
札幌駅一角は100名ほどの一種異様な軍団となった。
思いもよらぬほど膨れ上がった 西遊記ご一行。すでにテンションは高まっていた。
旅行会社「それでは 出発しまーす 皆さま こちらのバスへ」
でた!旗だ!よく見掛ける光景だ。だが今は当事者だ。おのぼり側だ。
ただひたすら旗だけを見てついて行った。気をつけなければすぐ迷子になる。
駅を出ると 目の前に3台のバスが止まっていた。
これか!これが觔斗雲(きんとうん)か!函館までの旅 よろしくたのむ!
と 軽く挨拶を済ませ。觔斗雲号に乗り込む。
がしかし…この西遊記を舐めきっていたゴクウ 乗った瞬間 衝撃が走った
狭い!どう見たって狭いのだ この觔斗雲号の座席が!
ゴクウは180cm台に見えるかもしれないが 実際は160ちょいだ
それでもこの座席幅はかなりな強敵と見た。
だが座席はピクリともせず 堂々と立ちはだかっている。
まず座れ!と言わんばかりだ。ゴクウは既に怖気づいていた。
いきなり こんな強敵に出くわすとは…
チラリと三蔵を見ると やはり焦りの色が見える。
覚悟の上とは言え これから函館まで7時間も掛ける行程。
この座席と格闘し続けるわけだ。三蔵すら恐れさせる觔斗雲号のシート。手ごわい。
座ってみる。 予想通りだ。
90度に毛が生えた程度の角度だ。背中に電撃が走る。先制攻撃だ。
前のシートとの間は60cmぐらいだ。当然 足を伸ばす事など出来るはずもない。
ましてリクライニングなど許されるはずもない。
まさに手も足も出ないとはこの事だ。隙がないのだ。強い。強過ぎるぞ觔斗雲号。
乗って2分で 猛烈な敗北感に襲われた。
「函館旅行を楽しむ」 そんな甘い気持ちは 押し寄せる激流に飲み込まれた。
このシートに7時間。果たして耐えられるのか?
今なら間に合う。今なら降りられる。中止にできる。葛藤があった。
だが三蔵はすでに切り替えていた。函館での予定を嬉々として語る三蔵に
「降りる」などと言えるはずもない。覚悟を決めなければならない。
微動だにしない觔斗雲シート。防戦一方のゴクウ。
バスのエンジンが掛かる。それと一緒に もう戻れないことを覚悟した。
西遊記 まさに修行の旅。 それはまだ始まったばかりである。
次回予告。
疲労 死闘 そして新たなる敵!ゴクウ逆襲なるか!
こうご期待。