その旅は 遥かなる旅。
遠い彼方へ運ぶ列車 北斗星に乗って
その旅は始まった。
そしてあらゆる冒険を乗り越え 我々を待ち受けいていたのは
えも言われぬ 喜びであった。
さて天皇杯 次があるかないか分からない大会だから面白い。
1つ勝つたび「次 どうする?行く?」となって 例え行きたいと思っても
「どうやって?」となる。 そう“行く手段”がタイヘンなのだ。
天皇杯はリーグ戦と違い常に1回勝負。次の予定は試合後でなければ決まらない。
まして北海道という 津軽海峡を越えた異国では「決まりました」「じゃ行きます」と
簡単に行ける距離でもない。時間・金・予約状況をクリアしなければ
現地で見事なコーチングが出来ないのだ。これは真に以ってチームの痛手である。
勝つことは当然 嬉しい。だが そう簡単に応援に行けない。
このジレンマが「天皇杯常勝軍団・コンサドーレ」のツラいとこなのだ。
12月23日。この世間ではクリスマス・イブ・イブという素敵な日に
こともあろうか「仙台」で あの「甲府」と試合をしなければならなくなった。
両チームとも微妙な距離間の場所。間を取ってと言えばそれはそうなのだが
津軽海峡の壁は厚い。陸続きではないため車はダメ・ツアーは満員 となれば
自力で何か手段を探す他ない。熱き想いだけで何とかなるものでもないのだ。
そこで生み出される案となれば 一つは フェリー
「苫小牧発 仙台行きフェリー」と拓郎が唄ったように じいさんに見送ってもらうか?
もう一つは 仙台空港着以外の空路。花巻・福島 場合によっては羽田まで飛んで
そこから仙台に向けて陸移動 という多少強引な方法もある。
だが 私のお薦めするのは 何と言っても 「
寝台列車・北斗星」だ。
ガタゴトと響くレールの音 カーテンを開ければ流れる景色
闇そして点在する窓の灯り やがて空が明け 朝が来る。
素敵ではないか。ロマンではないか。
もう既に予約された方もいらっしゃるでしょう これからの方もいらっしゃるでしょう
ここは先週 乗ったばかりの「北斗星・4号」を この私 kazuaが
北斗星の先輩の後輩として ご紹介致しましょう。
【寝台列車・北斗星4号】19:27発 札幌発 上野行き
12両編成 寝台種は「B寝台」から「ツインデラックス」までの5種
普通から まあまあ豪華 超豪華と各種取り揃えてございます。
また1人でも2人でも快適な旅ができるよう配慮した寝台種となっております。
中央車両・7号車にはレストラン。隣6号車には開放感溢れるロビーカーも装備。
ロビーカーにはシャワー室もございます。
とまぁ ざっと説明するとこんな感じで まさに「移動するホテル」といった列車
ただし いろいろ注意しなければならないこともございます。
例えば 寝台列車の心得。移動できりゃイイってもんじゃない。
せっかくの列車旅行 楽しまなくっちゃ損である。
例えば 何を持って行くべきか?必需品または 「あればより楽し」な物は何か?
例えば 時間。今回の場合は大丈夫なのだが 上野まで行く場合
7時半発の翌11時20分着 なんと約16時間という長時間の移動であるからして
出足 ちょっとの遅れでも到着に結構な影響が出る また雪のためとか
とにかく空路より遅れる可能性は高い。 実際 先週私達が乗ったこの列車は
岩見沢-上幌向間の事故で 出発が1時間の遅れというアクシデントがあった。
そんな事も含め 当日の様子をここで振り返ってみよう
これからの方に 何かの参考になるかもしれない。
pm5:30 札幌駅着 かなり早く着く。
出発まで2時間もあるが そこは「おのぼりさん」だ 正真正銘のおのぼりさんだ
早く駅に着いてないと気が気でない。まずは大丸へ行き お土産と食料を買う。
列車の中で食う物は重要なイベントだ。そこは慎重に吟味して貰いたい。
金が余って余って仕方がない方は 北斗星のレストラン「グランシャリオ」での
ご予約をお薦めする。列車の中でフルコースが食べられるのだ。
きっと素敵なディナーに違いない。
ただし 洋食¥7800 和食¥5500だ。 ふざけるな!と言いたい。
また予約ディナーが終われば レストランでは予約なしでも食べることが出来るが
料金は まぁ他に手段がないわけだから 何て言うか「向こう側」の値段である。
超豪華ディナーは庶民派の我々には向かない。
がしかし 大丸デパ地下「なだ万」の惣菜という暴挙に出た
いや それが精一杯だ。次こそはグランシャリオで豪華ディナーだ。
あの真っ暗で 何の楽しみもない景色を眺めながら優雅にディナー
その無駄な贅沢こそが旅の醍醐味なのだ。次こそは… そう心に決めた。
話しが逸れた。
札幌駅 pm6:10 出発まで まだ1時間以上もある。やはり早く着きすぎた。
CZ氏から連絡が入る。ただ一言「頑張ってネ!」と言われる。声のお見送りだった。
何を頑張るか分からないが「うん」と答えた。ニアミスで「海苔ピー」を貰い損ねた。
とその時 アナウンスが聞こえる
「ただ今 岩見沢-上幌向間 事故のため列車が止まっています」
出だし まだ札幌を出てもいない所で すでにトラブル発生だ。先が思いやられる。
U子が近くの駅員に聞いていた 「北斗星の出発は遅れますか?」と
駅員が言うには「いえ そちらは大丈夫ですので 定刻発車の予定です」と言う
少し安心し 予定通りpm7:00にホームに出た。間もなく北斗星が来る頃だ。
がしかし 定刻pm7:27になっても北斗星は来ない
それどころかホームには1台の列車が止まっていた
それは普通列車で どこをどう見ても寝台列車ではない
まさか この背もたれ90度の座席に16時間乗れと言うのでは…
思わず「函館ツアー・觔斗雲号」の苦い記憶が蘇った。
しかし今回はそんな事はない。遅れているだけだ。もう少し待とう。
だが 来ない。既に時計は8時に近い。駅員は居るがアナウンスはない。
さすがにジレて来た。近くのちょっと偉そうな駅員に聞いた
k 「北斗星はまだ来ないのかい?」
駅 「…ええ 間もなくですから…」
k 「間もなくって もう1時間も待ってるんだけど?」
駅 「 …ええ 間もなく ですから」
k 「だからな いつ来るんだ?あ?」
その日 札幌は寒かった。駅のホームは外だ。ダウンを着てても意識が遠くなる。
そんな寒空の中 1時間も外にいる事は正気な行為ではない。
例え事故であっても そこはプロなら それなりの対応は必要なのだ。
だが 北斗星待ちの列は ただひたすらに待たされた。
特に北斗星の旅は熟年の客が多い。ピチピチ組は私達だけなのだ
それを この寒さの中で待たせるとは! 私の怒りは熟年客たちの代弁なのだ。
もう一つ 私の怒りには 理由があった。
東室蘭で待ってる人がいるのだ。 北斗星の先輩 ナス氏だった。
この男 我々の乗る 1週間前に「北斗星」を体験していた。
先月末このブログに「北斗星でフクアリ行きます!」と書いたところ
即座に「先週 それで行って来ました!」と書き込んできたのだ
このナス氏の得意技 「
自慢ツブシ」だ。
例えば昨年 10月の仙台。私達が「サザンの仙台 行きます」と言えば
ナスは「仙台の他にも名古屋行きました」と潰してくる。
「札幌も行く」と言えば「札幌は2日間とも行く」と潰される。
今回の件も まずは「北斗星に目をつけるとは さすがですね」と持ち上げながら
「実は我々も、おととい、北斗星ツアーを満喫してきました」 という技に出る
こっちの自慢を
更に上行く自慢で潰すのだ。実に見事な技である。
そんなナス氏が 北斗星の先輩として「欠かせない物を渡したい」と
東室蘭駅で待っててくれる。この寒空の中 長時間待たせるわけにはいかない
とにかく出発の時間さえ分かれば遅れる時間も分かる。早くそれを知らせたい
だが 列車はまだ来ない。そしてようやく流れたアナウンスは
「あと30分ほどで北斗星が来ます」だった。 延べ1時間の遅れになっていた。
すぐさまナス氏にメールをいれる。
「すまない 1時間 遅れるんだ どこか暖かい所に居ておくれ」
という危機的状況にも ナス氏はやさしく
「了解です 早くカーテン シャーシャー 出来るといいですね」 と返してくれた。
そうしてpm8:15。
定刻より1時間も遅れた北斗星が ホームに入った。
その姿は重厚で威厳に満ちている。「遅れたが何かモンクでもあるか?」とでも
言いたげだった。その迫力に怒りの炎はすぐに消え 旅の気持ちに切り替えた。
ようやく「ファンジャニー」が始まる。夢と冒険の旅が始まる。胸は高鳴る。
いざ東京へ!そう意気込み 北斗星に踏み入れた。
10号車 B個室デュエット。それが我々に与えられた空間。
カーテン シャッシャやっても 誰にも迷惑かけない個室だった。
左右にベッドが2つ 真ん中は60cmほどの空間 入り口上には荷物棚
ベッド横の壁 中央には肘掛が出てくる仕組みになっている
カーテンは横開き まさにシャッシャッと出来るやつだった
ちなみにナス氏はロール型のカーテンだったらしく クルクルもあるようだ。
ベッドの上は2階室のベッドになるため 天井は低いが
中央のスペースには 列車上までの空間がある
狭いと言えば狭いが 列車の旅には十分快適な空間であった。
ようやく ようやく出発の時を迎えた。
長かった。準備・トラブル・怒り そして高ぶる気持ち。
個室のベッドに座り これから始まる冒険を夢見た。
ジリリリーーッ 発車のベルが鳴る。
さあ 夢を乗せて走る列車 北斗星 出発だ!
あまりにも長くなったので 続きは後編で。