一昨日の札幌ドーム。
そこに来た約1万の観衆は気づいただろうか。
試合開始を 「今や遅し」 と待つ観客 その後ろに忍び寄る 謎の生物。
敵か? 味方か? そもそも何の目的で ここへ来たのか?
あらゆる疑問が湧き上がる存在
君は 誰?
それは 試合開始前のことだった。
いつものようにSB・最前列を陣取り ルンバ氏と素敵な会話を楽しんでいた
R 「Nからチケット貰ったんスよ」 K 「ほぅ」 R 「サポポスターだかで貰ったからって」
K 「ほぅ しかし凄いな あの夫婦は」 R 「あの2人はモンスターですよ」
そんな とある夫婦の怪物サポぶりに感心しつつ試合を待っていると
ザワザワ… なにやら後ろの席が騒がしい。
振り返ると オーロラビジョンの下 一角が大勢の一団となっていた
どこかの会社か サポ仲間が揃ったのだろうか ざっと見ても60人以上はいる
大きな集団となっていた。 と その時だった 横のルンバ氏が
「あっ!」 と叫ぶ。
何かと思い もう一度 振り返った。
そこにいたのが 彼
集団 横の階段を降りつつ 愛想を振りまいている
アチコチからフラッシュが光る その度 彼は手を振り ポーズをとる
なかなか楽しい風景ではないか。
だが
誰だ 君は。
コンサドーレには 「ドーレくん」 という絶対的な存在が君臨する。
だが ここへ来て その存在が危ぶまれる程 謎めいた生物が登場した。
K 「いったい 誰なんだ?」 R 「徳島のキャラクター?」
いや 違う。 残念ながら 徳島にはキャラクターは存在しない。
そもそも存在したとして 札幌まで来るはずもない。
では いったい 彼は何者なのか?なぜ ドームに来たのか?
次々と浮かび来る疑問を 抑えることはできなかった。
と その時 ルンバ氏が 一つのヒントを見つけた。
「あっ "きよちゃん” だかって 名札がついてます!」
なぬ!きよちゃん!
そ それは もしかして 「きよちゃん」 ではなく
あの有名な
きよっち のことではないのか!
清田区 キャラクター 「きよっち」
「きよっち」 と言えば もう説明するまでもないだろう
全世界 ちびっ子たちの憧れ あの清田区のマスコットキャラクターだ。
きよっち誕生の際には キティちゃんも ミッキーも挨拶に来た というほど
「キャラクター界の王」 と言える存在である。
その きよっちが わざわざドームに出向いてくれた。
これほど喜ばしいことが あるだろうか。
私もルンバ氏も 感涙に咽(むせ)いだのは言うまでもない。
この 「きよっち」 の素晴らしい所は なんと言っても そのキャラクター設定にある。
普通は ドーレくんのように 何かしらのモチーフがあって それを擬人化するのだ
だが 「きよっち」 は違う。何が元になってるかは まったく気にしてない。
人の上に 「清田のマークを乗っけただけ」 だ。 実に正々堂々としたキャラクターだ。
近年 「ゆるキャラ」 なる けしからんブームがあり キャラクターの存在意義が
どんどんあらぬ方向へと進んでいる だが その流れに逆らうような ウケの狙わなさ
これこそがキャラクターの真意を理解したものだ。更には 分かりやすさがある。
清田区のマークを乗せれば 世界中 どこの誰でも 「きよっち!」 と分かるのだ。
これほど潔(いさぎよ)い作りはない。
しかもだ。ネーミング。これまた最高だ。
清田区のキャラクターだから 「きよっち」 どうだこの潔さ。
「きよちゃん」 でも 「きよたくん」 でもない。 「~っち」 と付ける辺り
「親しみやすさ」 や 「仲間感」 を重要視しつつ 「清田」 の所は揺るがない という
実に高度なネーミング技術である。素晴らしい 素晴らし過ぎるぞ きよっち。
がしかし 気になるのは なぜ きよっちがドームに現れたか?だ。
その日 オーロラビジョン下に集った一団は 役所関係の方々と聞いている
とすれば 「きよっちも急遽 応援に駆けつけた」 としても 不自然ではない
だが 本当にそうなのだろうか。それだけの理由で わざわざ来てくれたのだろうか。
他にも 理由がありそうな気がする。
あれは4月末の愛媛戦。
その試合 スペシャルゲストがいた。 1人はジョーこと 城彰二。
もう一人 いや 一物体 は
Mr ピッチ
このスペシャルゲストの登場に燃えたのが 言うまでもない ドーレくんだった。
ドーレくんのダンスには いつも以上のキレがあった。
ドールズと踊りまくるドーレくん。その様子を 横で ただ見てるしかない Mr ピッチ。
ドーレくん vs Mr ピッチ
夢のキャラクター対決は ドーレくんの一方的な勝利で終わった。
その様子を きよっちの中の人 いや きよっち自身が 見ていたのではないだろうか。
見ていたに違いない。そして こう思ったはずだ。
ワレこそが 最強キャラクターである と。
きよっちは ドーレくんとの戦いの時を待っていた。
あの同系列では No1 と思われたピッチでさえ 手も足も出なかったのだ
「考えなさ」 で言えば きよっちの数倍 上を行くピッチ。
サッカーのキャラクターだから モチーフは 「芝」 名前は 「ピッチ」
どうだ この潔さ感。他に類を見ない潔さだ。だが ピッチにも弱点はあった。
確かに 「サッカーだから 芝」 は良いのだが
もし Mr ピッチがゴルフ場に行ったら どうだろうか?
何の違和感もない。 むしろ そっちの方が似合っている。
名前も 「グリーンくん」 か 「ラフ」 で決定だ。 これまた 違和感なし。
または 野球場ならどうだろう? 「外野くん」 か?
カタカナなら 「ガイヤ」。なぜか カッコいい。 「Mr ピッチ」 より素敵になった。
これはイカン。
唯一無二にあらねばならないキャラクターが
他にも似合ってはイカンのだ。
潔さ度で言えば 格上だった Mr ピッチが 実はそうでもない事を知り
さらには ドーレくんに惨敗した。もう こうなれば 自分がやるしかない。
「ドーレくんとの直接対決に臨むしかない」 きよっちは そう考えたのだ。
対決方法は ただ一つ。
「どちらの 存在感が 上か?」
これだけだ。
その存在感だけで どれだけの人を魅了できるか?
一人でも多くの人を魅了した方が勝ち。それが勝敗を決めるルールだった。
キャラクターの本分は ダンスでもない ミニミニバイクに乗れることでもない
「ただ そこに存在し 人々を魅了すること」 それなのだ。
だからこそ きよっちは 飾りっ気などなく なすがままのキャラクターなのである。
勝機は 完全に きよっちにあった。
それもそうだ。人っぽいキャラクターに 清田区のマークだ。
強烈度で言えば 敵う者などいない。いるはずもない。
しかも 「~くん」 vs 「~っち」 のネーミング対決でも きよっちが圧倒的なのだ。
戦前から どちらに軍配が上がるか 容易に予想はできていた。
そして いよいよ対決の時が訪れる。
ドーレくんが入場して来たのだ。当然 SB席 上段にいる きよっちに気づく。
その瞬間だ 2人 いや 2つの間に バチバチ バチーっと火花が散る
ドーレくん vs きよっち まさに世紀の対決の始まりだ。
結果から言おう。
この世紀の対決は 「引き分け」 に終わった。
いや そもそも 対決そのものがなかった。
闘志を燃やしていた きよっち に対し ドーレくんは挑まなかったのだ。
いつものようにダンスをし いつものように手を振り スタジアムを周った。
なぜドーレくんが戦いに挑まなかったのか その気持ちがよく分かる。
「戦うのは 俺達じゃない ピッチの選手だ」
そう 言いたかったに違いない。
その通りだ。今 戦う相手は キャラクターじゃない。相手チームなのだ。
まして1戦も落とせない大事な終盤。違う所でエネルギーを使うわけにはいかない。
そう判断したドーレくんは きょっちの挑戦状を そっと胸にしまった。
また さすがわ キャラクター界の王 きよっち である。
ドーレくんの その想いを理解し 対決の場を急がなかった。
そこが 王の王たるところである。
両雄の熱き魂は 「戦いのエネルギー」 と変わり
それは 選手たちへと分け与えられた。
その結果が 徳島戦 1-0 の勝利である。
どうか 皆さん きよっちに大きな拍手を。
その日 ドームでは もう一つの戦いがあった。
互いの存在感を賭けた戦い。
ドーレくん vs きよっち
そこにいた 約1万の観衆は 気づいていただろうか。
結果次第によっては ドーレくんは引退の危機に陥ったかもしれない
だが 「今は 対決の時じゃない」 そう理解した両雄は 戦いの場を降りた。
間近にいた我々は その英断に拍手を送った。
もしかすると シーズンオフに実現するかもしれない。
今度は ドーレくんが清田区役所に出向く というアウェイの戦いになるかもしれない。
その時は ぜひ 見届けたいものだ。
最後に もう一度 言わせてくれ
やっぱり 君 誰?