桑田佳祐さんは 不幸な人だ。
ここ1年ばかり 2週に1度はカミさんの実家へ行ってます。
車でちょうど1時間の距離にある実家。その車中でオレがやるのは
「歌を唄ってる」
暇だからなのか 車という個室がそうさせるのか とにかく歌ってますね。
でまた 「歌えば楽し」 で 車に乗って歌さえ唄ってれば上機嫌なわけです
で 唄うのはだいたいサザン。時々ハマショーや最近は演歌シリーズもあるかな。
最初は小声で歌うんだけど 「お 今日は調子がいいな」 と思うと
だんだん声がデカくなる。カミさんは横で 「うるさいなー」 って顔をするんだけど
それでも構わず唄ってると カミさんもノッてきたぐらいにして。
で 歌詞を間違えたり 音程が違ったりすると カミさんにダメ出しするんですよ。
するともう 歌のレッスンですよ。「天城越え」 の時は ちゃんと天城を越えるまで
レッスンしましたからね。 「違う違う まだ越えてない!」 つって。
1時間の道中ではあるんですけど そういう事が結構 楽しいんですよ。
先週の金曜も実家へ行く用事があって さぁ出発ってなった時 カミさんが
「今日はラジオ聴くからね」 って言うんですよ。だけど ラジオをかけてたら
唄えないじゃないすか。あの楽しい時間を奪うのか!って憤慨しましたね。
ただ どうもその日 ラジオの番組では
「サザン特集」 があるようで。
だったら聴くしかないじゃないか!って完全に覆りましたね 賛成派に。
で 番組が始まって お約束の 「勝手にシンドバッド」 からですよ。
もう1曲目から車内はノリノリですよ。でね 最初は聴いてただけだったけど
やっぱりそこは車内というライブハウスなわけだ。で カミさんがちょっと歌い出した
するとオレも負けられないから 唄う。「今何時~♪」 「そうねだいたいね~♪」 って。
他の曲も全部 歌詞は知ってるし もう体に沁み込んじゃってるから 唄うわけよ
「次はどんな曲かな」 ってワクワクしながら。入れば歌う。歌って弾ける。
ふとね。ジーンと来たりするんだよね。楽しくて。
サザンはさ 俺らの 「青春のBGM」 なのよ。
「勝手にシンドバッド」 はベストテンのコーナーだったよな とか
24年前の真駒内 お前と一緒に行ったんだよな とか
函館行った時 ずっとサザンかけてたよな とか
何かいろんな思い出と一緒に サザンの曲があって そして今もある。
そういうのが 何だか妙に グッと来たりしてね。
まぁ2人とも ここまで色んな事があったんだけど
今 横で車 運転しながら歌ってるカミさんを見ると ね 何つうか。
大した事じゃないんだけど オレには凄く楽しくて 凄く大きな事なんですよ。
桑田佳祐さんは 不幸な人だと思う。
だって サザンの曲で こういう楽しい思いできないからね。
凄く楽しいんですよ。歌って ただ騒いでるだけなんだけど 凄く楽しい。
その曲の時の自分に戻ったり 2人に戻ったり 思い出が映像ように蘇ったり
そういう作用が サザンの曲にはあって 楽しいんだよね。涙が出るほど。
桑田さんは 「そうなるように曲を作って」 皆 それぞれが思い出として残して
それは素敵な事なんだろうけど 桑田さん本人は そういう素敵な思い出じゃなくて
例えばスタジオに篭って曲を作った思い出とか 急かされて搾り出したとか
曲自体の思い出って 実は苦しさとかが多いんだろうな と思うんですよ。
そうして 聴く側と作る側では 全く違う角度になるわけで
それは やっぱり不幸な事かな と。
サザンの曲で凄い数の人が楽しい気分になるんだけど
一番 近くて 一番 遠い人が 桑田佳祐じゃないですかね。そんな風に思います。
だけど逆に オレらはサザンと一緒の時代に生きられて 幸運でもあります。
僅か1時間のドライブだけど ラジオで流れたサザン特集は楽しかったですよ。
1つ1つの曲に 1つ1つの思い出があって 隣で歌う人との思い出もあって
そういう時間に暖かさとか 幸せみたいなものまで感じました。
改めてサザンオールスターズという存在に感謝しましたよ。
実家の前に着いた時
まだラジオは終わってなく 次のリクエストが掛かる
聞き馴染みのあるイントロ。流れた曲は
「Oh!クラウディア」
車を降りられなくなった。
カミさんとオレは 曲が終わるまで車の中にいた。
ただ静かに その曲を聴いた。
それもまたいつか 思い出のひとつに変わるのだろう。