エボシ岩が遠くに見える
涙 あふれて 霞んでる
あれは01年の事だから 今から7年前のちょうど今頃。
カミさんが何を思ったか 突然 「ヨコハマ 行きたい!」 と言い出しまして
当時 横浜で特に何かあるわけじゃなかったんですよ。サザンがあるわけじゃなく
話題の名所が出来たわけじゃなく これと言って横浜に行かなきゃならない理由は
見当たらなかったんですね。 ただカミさんの目は 「絶対 ヨコハマ 行く!」 と言う
決意が漲ってまして 「あぁこりゃ決定事項だな」 って事で 行く事にしました 横浜。
ただ 行くにしたって 何らかの理由はほしい。
ただ行って ただ観光するってのもどうかと思って 「じゃ 何かテーマを決めよう」
って提案したんですよ。 テーマ っても小難しいものじゃなくて 旅の目的みたいな
何かキーワードがあれば 楽しさも倍増するんじゃないか って思いましてね。
俺らに相応しい何かないかな と考えました。で パッっと思いついたのが
サザン。
横浜と言やーサザンじゃないですが。この機会にサザンに因(ちな)んだ場所を
巡ってみようと提案したんですよ。江の島とか茅ヶ崎とか鎌倉とか行った事ないし
一度は巡ってみたいな と思ってたんですよ。カミさんも 「そりゃ面白そう」 と
乗り気になりまして さっそく計画を立て出しました。 ただ カミさんからの要望で
「サザンだけじゃなくて ユーミンも入れてくれんかね」
と言われまして 「じゃあ サザン&ユーミンの旅」 に決定したわけでありです。
ただよく考えば サザンもユーミンも コンサートやイベントをやるわけじゃなく
旅のテーマが サザン&ユーミンってだけで かなり間抜な旅ですけどね。
で そこまで決まると 「じゃいつ行くか」 ってなりまして 予定を調べてみますと。
ありましたよ 良い横浜日和が。その日を軸に 横浜旅行の日程が決定しました。
2001年8月25日・横国 コンサドーレ札幌 vs 横浜Fマリノス
3週間後に行われるこの試合に合わせて 3泊4日に決めました。
となれば と早速 旅行代理店に行きましたね。一目散にカウンターへ行って
何でもいいから ゴージャスで 素敵で 激安なツアーを出せ!と要望しました。
こうして サザン&ユーミン&コンサドーレな旅 が始まったのでした。
ホテルは関内と桜木町の間ぐらいだったですかね。部屋はゴージャスで素敵な
とは縁遠い 狭ーい部屋で 「さすが激安だぜ!」 とその威力にビビりましたよ。
だが 今更しょうがない。 どうせ旅のスケジュールはびっしりだし ホテルには
帰って寝るだけだから と思い直しました。で すぐ部屋を出て 最初に行ったのは
ドルフィン
この店はユーミンの歌に出てくるらしく 「山手のドルフィンは 静かなレストラン」
と歌われているようです。まぁ歌は非常に悲しい歌なのですが 店は素敵な感じで
30代・40代のおばさ いや 素敵なおねえさま方が大勢いらっしゃってました。
ただ ここに行くのが結構 大変で。山手っていうぐらいだから 山の中腹にあって
しかも分かりづらいんですよ。当時はパソコンもないし 当然インターネットもない。
だから事前に調べもせず ガイドブック1冊だけを頼りに 探しに行ったわけです。
しかもオレ 「この旅で タクシーは使わない」 って決めたんですよ。
セコく行こうってのもあったんだろうけど それだけじゃなくて 「旅でタクシー」 って
ロマンがないじゃないですか。 予定通りに進まないのが旅の面白さですから
地元の乗り物で移動する。 いろいろ調べながら 上手く行ったり 行かなかったり
そういうのが 後あと思い出になりますからね。 だから Noタクシー宣言ですよ。
が、その結果 ドルフィンまで行くのに えらい苦労しました。
店まではバスで行ったのですが。だいたいにして 札幌でさえ ほとんどバスに
乗らないヤツらが 土地勘のない横浜の それも山の方へ行くバスに乗れるか?
っちゅう話ですよ。路線図なんて どう見ていいか分からないですからね。
それでも何とか調べて やっと分かって ドルフィンが見えた時は嬉しかったですね
カミさんは店自体に思い入れがあるから なお更 感激してましたよ。
店の窓から海が見えて 船も通ってて ソーダ水は頼まなかったですが。
で 店を出たら そこそこ良い時間でした。 次の予定はコンサドーレ。
逆算すると急がなきゃ試合に間に合わない。ヤべぇってバス停まで走りましたよ。
が、その時 俺らを追越すようにバスが通り過ぎる。 それに乗れなきゃマズいんだ
と走って 走って すると先のバス停でバスが止まったんですね。でも まだ遠い。
これ “ギリギリで乗れないパターンのやつかも” と思いながら 走っていると。
バス停に老婦人がいたんですね。その方 足が悪いらしく 乗るのに少し時間が
掛かってたんですよ。それでギリギリセーフ。 乗れた時はガチでほっとしました。
いやードルフィンで天使に出逢いましたよ。 名も知らぬ ばーちゃん ありがとう。
そして横国。その年は02W杯の前年で W杯決勝が ここで行われるのは
決まってましたから スタジアムを見ただけで感激しましたね。デカいし 綺麗だし。
だけどスタジアムはガラッガラで淋しいもんでした。でまた肝心の試合は・・・。
正直 あんまり覚えてないです。 確かウィルがゴールしたような (横浜の選手で)
で 試合終わって 次に行ったのが みなとみらい。大道芸見ましたよ。2時間も。
ホテルに戻ったのは12時近かったかなぁ もう気絶したように眠りましたね。
そして翌日。その日がメインの 「サザン (に因んだ場所巡り )の旅」 であります。
早々と起きて まずは江の島を目指しました。着くと結構な人がいて
「今日はお祭りですか?」 って聞こうと思ったんだけど 「これ位は普通だよ」 って
知ったかぶった顔して カミさんが言うもんだから やめましたけどね。
江の島ではサザエ食ったり 島探検したり 小さい遊覧船みたいなのに乗ったり
いかにもな観光客しましたよ。ああいうのもイイもんですね 素直に観光するって。
そして ここからがアドベンチャーだ。 次の目的地は 茅ヶ崎。
当時の茅ヶ崎は 今ほど観光化も サザンとの縁も あんまりアピールされてなくて
その前年に行われた 「茅ヶ崎ライブ」 から徐々に名所になって行ったようです。
だからですかね 江の島から藤沢に行って そこで駅員に聞いたんですよ
「茅ヶ崎には どうやって行くんですか?」 と。そしてら駅員が 「何しに行くの?」
みたいな顔をしたんですよ。地元民じゃないのに?って。俺ら北海道民にしたら
江の島も 鎌倉も 茅ヶ崎もみんな 「サザン名所」 みたいに思ってたんですが
実際は違うんですね。茅ヶ崎まで行くのは そうとうなツワモノだけなようでした。
それでも こっちは憧れの茅ヶ崎だ。駅に降り立っただけで 感無量ですよ。
そして 込み上げる涙を抑えながら 駅前で ふと思ましたね
「ところで 茅ヶ崎で 何を見ればいいんだ?」 と。
当時はサザンに因んだものも余りなくて いや あったのかも知れないけど
調べてないし。でしょうがなく 地元のタクシードライバーに聞いてみたんですよ
「何かいいとこないですか?」 って そしたら 「特にないねー」 と つれないそぶり。
さすが桑田さんの地元だなぁと感心しつつも このまんまで帰るわけにゃいかない
来たからにゃ何が何でも 「サザンを感じて帰るぜ!」 と意気込んでました。
で 駅前の看板で 案内らしきものを見つけて 海岸まで行けば 「サザンビーチ」
というものがあるのを発見しました。これだ!と ここに行くしかない と。
桑田さんが波乗りしてるかもしれない と思い即座に向かおうとしました。
で いざ行こうと思って カミさんを見たら 暑さでマイってる。 その日 気温は
軽く35℃を越えてました。しかも炎天下の中 どこにも入らず ウロウロしたもんで
カミさん 相当弱ってましたね。さすがに可愛そうだと思いましたよ。
が、馬鹿やろう!と。 茅ヶ崎まで来て サザンを感じずに帰る馬鹿がいるか!と。
無理やりバスに乗せましたよ。ええ。 茅ヶ崎に鬼が出ました。
バスは茅ヶ崎駅から商店街みたいな所を下って行き すると海が見えて来て
8月の湘南の海はキラキラと輝いて サーフィンする人が何人かいましたね。
そういう景色をバスの窓から見つつ 反対側に目をやると 茅ヶ崎球場が見えた。
ああ ここで あの伝説の茅ヶ崎ライブをやったんだ って また感激ですよ。
で 適当な所でバスを降りて 海岸線を歩きました。どピーカンの空は無遠慮に
体が焦げてしまうじゃないかってほど暑かったですよ。カミさんは歩くだけで
ヘロヘロになってましたが それでも感激してたらしく 「帰る」 とは言わなかったし
汗 いっぱいかきながら 歩いてました。 すると 遠くに見えたんですよ あれが。
どうしても見たかった あれが。
エボシ岩。
「チャコの海岸物語」 が出たのは 俺らがまだ10代の頃で。
その当時は 何だか ふざけた歌だなーと思ってましたね。 ただ その歌に出てくる
「エボシ岩」 というのが妙に気になりました。どんな岩か興味があったわけじゃなく
キーワードとして 「エボシ岩」 って言葉が強くインプットされていたんですね。
多分それは 桑田さんにとって 故郷の象徴 だったんじゃないかと思います。
地元愛を伝えるべく 歌詞にその場所を入れたんだろうな と 思いますね。
それが茅ヶ崎の海岸を歩いた時 パッと目に入った
「あれってエボシ岩じゃないか?」 って言うと カミさんも 「そうだね」 と。
なんだろうなぁ あの感激は。実際に見ると 凄くちっちゃいんですよ。
結構 遠くにあって 小さく ちょっこっと見える岩。その時は双眼鏡も持ってなくて
肉眼で 霞みそうになりながらも見ました。それでも感激しましたね ほんと。
桑田さん おれ とうとう来たよ。
念願のエボシ岩を見て 帰りは海岸から駅まで歩いて行って もう暑くて暑くて
途中スーパーに入って 単に冷房に当りたいだけで しばらく休んだりしましたよ。
帰りも藤沢で降りて 今度は江ノ電に乗りましたね。それも 「一日乗車券」 を買い
乗っては降りるを繰り返す。何を見るわけじゃなく どこへ行くわけじゃなく
ただ 降りて乗るだけ。元取るためにですよ。セコいね まったく。
あ 稲村ヶ崎には行きましたよ。稲村ジェーンのロケで使われた んじゃないか と
思われる店に入ってアイスコーヒー飲みましたけど 全然 違う店でした。
それでも満足なんですよ。 「江ノ電 乗って 鎌倉に行った」 ってだけで。
茅ヶ崎で桑田さんを感じて 鎌倉で原坊の唄が流れて それが旅の目的でしたし。
その後は どこへ行ったんだったかなぁ。ちょろちょろしてホテルに戻ったら
その日も11時とか かなり遅かったような。何かイベントがあったわけじゃなく
ただ サザンに因んだ場所を巡っただけなのですが いっぱいありましたね。
その日も ホテルに着くなり メシ食ってバタっと倒れました。
最終日は 中華街に行って 山下公園に行って シーバスに乗って。
それぞれ思い入れのある場所を巡ったり 観光したり コンサドーレも観戦して
バタバタと忙しくも 楽しい旅でしたよ。札幌に着いたら どしゃ降りの雨でね。
そこで初めてタクシーに乗りましたよ。横浜ではNo!タクシーでしたけど
地元に帰って 疲れ切った体と どしゃ降りじゃ さすがに折れました。
でも 楽しかったなぁ。サザン巡りの旅。
江の島 茅ヶ崎 エボシ岩。歌に出てくるあの場所を 自分の目で見て 足を運んで
それぞれに深い思い入れがあるから あの感激があったのだと思います。
他の人には ただの観光地だったり ただの岩だったりするんだろうけど
自分にとっての聖地ですからね。そういうものがあって 想いを果たせた事が
何より嬉しかったんですよ。たまにはいいですね こういう旅も。
年甲斐もなく ロマンティックでアドベンチャーなジャーニーは 思いの他 楽しく。
それでいて 何か切なくなるような しみじみとする感激があった。
それは たぶん カミさんと自分が 同じ時を過ごして来たからだろう
思い入れのある地を巡るのは 青春のアルバムを開くようなもの。
開いては思い出し 見ては その頃に返る。そんな事を繰り返す旅になった。
カミさんのドルフィンと オレのエボシ岩。
そこに行った感動は それを見た感激は
今も あたたかく 2人に残ってる。