昨夜 横浜では盛大なる “ひとりカラオケ大会” が行われた。
ここ数年 「カバー」 と称して 多くのミュージシャンが 他人の曲を歌ってて
あれが どうも好きじゃない。歌の上手い人が 名曲を歌うのは良いと思うんですよ
同じ曲でも歌唱力のある人が歌うと 違う味が出て こういう表現もあるんだな と
妙に納得したりしますね。ただ ちょっとアレな人や 特に個性のない人が歌うと
これ 「ただのカラオケ」 になっちゃうわけですよ。それが爆発的なヒットなんか
しちゃうと なんだかなーとね。もっとちゃんと歌ってる人いるだろ と。
ただ このカバーというもの ミュージシャンにとって 本音はどうなんだろう?と
思うんですよ。他人の曲だから 基本的には 避けたいってのはあるんだろうけど
元々歌うのが好きでプロになったわけだから 絶対 イヤって事はないだろうし
まして小さい頃から 歌をたくさん聞いて来ただろうから思い入れも強かったりして
内心は それなりに楽しんでるんじゃなかろうかと思うわけです。
でまた カバーが流行ってるのは “聴衆が求めてる” からだと思うんですね。
「あの人に あの歌を 唄ってもらいたい」 みたいな興味って あるじゃないですか
そういう無言のリクエストが 今のカバーブームを作ったのかなと思いますね。
で そんな流行りに乗ったわけじゃないでしょうけど。今週の日曜から始まった
桑田佳祐 「Act Against AIDS 2008 (通称AAA)」 IN パシフィコ横浜
この模様が 昨夜 WOWOWにて生放送されたわけでございます。
AAAとは 多くの人にエイズに対し関心を持ってもらうためのイベントで
93年から 毎年 行われてて その収益はHIV患者へ支援される という
あの 悪ふざけなおっさんも こうして結構 世の役に立ってたりするんですね。
で このAAAに ほとんどの年 参加してる桑田さんですが 通常のライブと違って
サザン及び桑田佳祐の曲はほとんどやらないんですよ で 何をやるかって言うと
他人の曲
要するに 3時間 めいっぱい 「桑田佳祐 カバーコンサート」 になるわけです。
でまた これがまた結構 面白い。本人の趣味的志向が強く 聞いてる側の人間は
ポカーンな曲が多いのですが 本人は実に楽しそうなんですよ。それが楽しい。
で 毎回 その趣味的志向のジャンルが違って これまでだと ディスコ&ソウルを
やった年もありましたし 英国ロックや ビートルズやクラプトンの時もありました。
圧巻は2000年にやった “桑田佳祐が選ぶ20世紀のベストソング” というもの。
この時に宇多田ヒカルの 「First Love」 を唄ったのですが これがもう絶品で。
聞いてて 涙がポロっと零れましたよ。あれは忘れられない一曲になりましたね。
で 今年は 「桑田佳祐 昭和八十三年度! ひとり紅白歌合戦」
何と 一人で 紅白をやったんですよ 桑田佳祐さん。赤組 白組を交互に歌って
全61曲 3時間ぶっ通し スーパーハードで 最高のステージでした。
選曲は当然 「桑田佳祐 趣味の世界」 だから ものっすごい幅があるわけで
植木等や越路吹雪があれば 倖田來未のキューティハニーもある
ムチャクチャなレパートリーになるのですが それぞれに思い入れがあるようで
やっぱり そういうものが伝わってくると こっちにも乗せられるものがありますね。
でまた古い曲は ものまねに近くなるんですよ。それは たぶん桑田さんが
その歌を聴いてた時が生々しく残ってて 唄うと自然に再現しちゃうんじゃないかと
思うんですよね。俺らもあるじゃないですか カラオケに行った時とか 唄ってると
テレビで見てたその人がイメージされて 同じように歌ってしまうみたな。でまた
近くなればなれるほど楽しい的な。そんな感じに見えたんですよ 桑田さんが。
特に前川清なんて 笑えるぐらい ものまねでしたね。だけど 「分かるなー」 って。
プロで30年も歌って 売れ続けても 根っこは俺らと大して変わんないだなーって
思いましたね。歌う楽しさは 俺ら ど素人のカラオケ変わらないんだな と。
で ずずーっと曲が進んで行って もうそろそろ終りに近くなって来た頃
トリに何を歌うかって 凄く気になったんですね。で カミさんと 「何だろな」 って
いろいろ予想し合ってたんですよ。ただ 結局 どっちも当りませんでしたね
だって 大トリは白組(男)の番だったのですが 歌ったのは
和田アキ子 「あの鐘を鳴らすのはあなた」 だもの。
こういう悪ふざけが また らしいと言うか。これでまたネタになるんだろうなぁとか
思ってたんですよ。 だけど この曲で ちょっと思い出した事があったんですね。
今年の夏ぐらいだったか 「カギの使い」 に和田アキ子が出てまして
和田アキ子に質問をして その答えを皆で予想するってのをやってたんですね。
で その時 「あの鐘を~ を誰に歌ってほしいか?」 って質問を和田にすると
「桑田君」 と答えてました。接点があるのか ないのかも知りませんし 唐突に出た
「桑田君」 という答えに正直 びっくりしましたね。でも何か嬉しかったですが。
それを思い出した時 そうか それで大トリをこの歌にしたのかって分かりました。
お互いにリスペクトがあるから こういう気持ちの交流があるんだな と。
リスペクトがあって リクエストにお応えして。そういう一曲を最後に残していた と。
と言う事で 昨夜 行われた 「史上最大の 超大掛かりな ひとりカラオケ大会」 は
単なる趣味の世界ではありましたが その根底に流れる愛情や尊敬 そして憧れ
そうしたものが垣間見えつつ 古き良き歌を 今に蘇らせ 人々の心に響かせた
実に意味深いひと時であった と思います。
ただ 古きものが良い と後ろ向きじゃ これ進歩がないわけで 新しいものの良さも
受け入れつつ どこかでは 本質的な良さを見極め 伝えなければと思う次第です。
その橋渡し役になるのが 我々おっさん・
おば いや奥さま方世代ではないか と。
自分らの知っている または経験している貴重なものを ぜひぜひ後世へ
そう思った師走の夜でございました。
いや~ それにしても 昭和は深いね。深過ぎるよ。桑田さん。