人は誰でも 「他人にゃ言えない趣味」 がある。フフフ。
昨年末は バタバタとしたまま大晦日を向え 転がるようにカミさんの実家へと向った
今回は途中で姪っ子を乗せ 一緒に行ったのだが この姪っ子と一つ約束があって
「大晦日にクリスマスプレゼントを買ってあげる」 というものがあった。
1週間も遅れたプレゼントってのも痛い話しだが それでもリクエストを聞き
「本が欲しい!」 というリクにお応えし 途中 本屋へ寄る事になっていたのだ。
ジャスコの本屋で 姪っ子が選んでる間 「自分も何か買っておくか」 と物色した
だが 普段 本を全く読まないオレ。買おうと思うと 何を買っていいか分からない。
しばし迷い 結局 手に取ったのは 「週刊サッカーマガジン」 という何のサプライズも
ない その冒険心のなさに 逆に驚くわ と思えるほどの一冊を選んでいた。
ただ一言 言わせて頂くと このサッカー雑誌でさえ 「買うのがサプライズ」 なオレ
他人には どれだけ長クドい文を読ませようと 自分で読む気にゃなれない
余程の理由がない限り 買う事も読む事もしないのだ。決まって買うのは 年1回だけ
2月末に出る 「選手名鑑」 の時だけである。あれだけは 蹴馬鹿の必需品なのだ。
ただ 今回のように 「カミさんの実家へ2泊3日」 とかの場合も 買う事がある
いくら図々しいオレでも やっぱりカミさんの実家では 多少 遠慮をしたりするのだ
テレビのリモコンを握るのも 冷蔵庫を開けるのも 何の躊躇いもないが
それでも どこかに遠慮はある。となると どうしても時間を持て余す。そんな時に
本があると都合がいいのだ。今回買ったサカマガも そんな時間潰しのためだった。
「ほぅ 石崎さんのインタビューが載ってるな」
サカマガを選んだ理由は ただそれだけだった。
習慣化されてないだけに 週刊誌を買う(grate!)には 何らかの理由は必要になる
「石崎インタビュー」 は サッカー雑誌初級者なオレにとって 選ぶべき材料となった
ただ その他記事は それほど興味深いものはなく パラパラとめくっただけで
後はまたテレビのリモコンを握っていた。と そんな時だった カミさんがサカマガを
手に取って 1・2ページめくり 驚きの声で 言った
「ちょ ちょっと コレ! あんた コレ 買わなきゃならないんじゃないの!」
そんな大袈裟な だいたいサッカー雑誌に んな食いつくようなもん載ってねぇべ…
と 言おうかな と思いつつ カミさんの指すページを覗いてみた
と そこには なんと!ある雑誌 発売の広告が!
「静岡の高校サッカー」
なんじゃ そりゃー!!!!
こ これは ま まさしく
お宝ではないか!
正直 ビックリした。
ちょっと考えても ごらんなさいよ。
全国 いや全世界に サッカーファンは数知れず存在して
数知れずのサッカー雑誌があるのだろうが 「静岡の高校サッカー」 とは
ここまで ピンポイント 且つ マニアックな雑誌はあるだろうか?
日本の いち県の 高校生の しかも 「選手権」 に限った題材の サッカー雑誌なのだ
サカマガの巻頭1ページに掲載された その広告を見ただけで 頭がクラクラした。
サカマガを買った時は平坦だったテンションが ギュギューンと音を立て上昇する
こんなマニアックな雑誌 作りやがって…
買うしかねぇじゃねぇか!
高校選手権ファン しかも 静岡県ファンの
オレのための オレだけによる オレの雑誌じゃねぇか!
そう心で叫んだ。叫ばずにいられなかった。お宝発見の瞬間である。
たが 時は大晦日。ここは札幌から100kmも離れた片田舎なマチ。
すぐさまこのお宝が手に入るか?そんな心配があった。さり気なくカミさんを見る。
カミさんの目は 「札幌に帰るまで無理だ あきらめろ」 そう訴えていた。
その夜は仕方なく 広告の僅かな行の文と 掲載の写真を 何度も見返し 寝た。
明けて元旦。新たなる年の始まりである。チャレンジの年である。
ならば チャレンジするしかない。どれほどの逆境であろうとチャレンジするしかない。
そう決意し 隣町のショッピングセンターまで 車を走らせた。
目的は もちろん 「静岡の高校サッカー」 購入のためである。
行く途中 カミさんは 「たぶん無いと思うよ」 と何度も言っていた
おそらくオレが 血眼(ちまなこ)で探し だが無く 落胆するのを気遣っての言葉だろう
だが 勝負の前から諦めてたまるか!例えその可能性が 中山元気のハットトリック
ぐらいのものであっても 不可能ではない いや不可能だ!いや不可能じゃない!
もう期待してんだか してないんだか分からなくなるほど錯乱し 雑誌を探しまくった
だが やはり ない。
ガックリと うな垂れるオレを見て カミさんは言ってくれた 「もう1軒 行こうか」 と。
また車を走らせ 次のショッピングセンターへと向った。一度は奈落へ落ちたものの
近づくにつれ 「次はある!必ず ある!」 そう信じられた。
それは まるでJ1のコンサドーレのようだった。
そう。どれだけ負けようと 試合前日になると 次は勝てる!勝つのだ!と信じる。
あの信じ込む気持ちに似ていた。試合前だけはマンUにも勝てる気がするのだ。
がしかし 必ず 現実は訪れる。どれほどの妄想をしようとも 現実は現実である。
2軒目のショッピングセンターにも 「静岡の高校サッカー」 は 無かった。
店内くまなく探した。旅行雑誌コーナーまで探した だが探せど探せど それはない。
少しイラっと来た。本屋なのに なぜこのような素晴らしい本を売ってないのだ?と。
馬鹿やろう!と。分かってねぇな!と。 危うく 店長に一言 物申すところだった
だが ちょっと考えた もしかして 隠しているのかも知れない と。
そう考えると納得ができる。これほどのお宝 そう簡単には売買できないのだ
静岡に対し 選手権に対し どれほどの想い入れがあるか 確認が必要なのだろう
歴代の静岡県出身選手を数名 答えられてこそ この本を購入する権利があるのだ
カウンターで この本の所在を聞けば 必ず 質問をされるのだ そうに違いない
そう思い すぐさま名前を浮かべた サントス…川口…南…河村…佐賀…
選手権で見たオレのヒーローたちを次々と思い浮かべた 軽く20~30人は出てくる
うむ。これなら大丈夫だ。この熱意に きっと売ってくれるはずだ。奥の棚から きっと
あのお宝本が出てくるはずだ。そう自信を持ち ありとあらゆる心の準備をし
いざカウンターへ!と向った
だが そこで もう一度 考えた。
ここは北海道。しかも札幌から100kmも離れてるマチ。
サッカーファンでさえ多くはないだろう。そんな場所で 「静岡の高校サッカー」
そういう本が売れるのであろうか?もしオレが店長なら 100パー ナシ! だ。
あまりにもマニアック過ぎる。過ぎるにもほどがある。それは断言できる。
例えばだ 「曽田雄志のヘアースタイル軌跡」 なる本があったとしよう
彼の髪型の変歴を数十頁に渡って紹介する本だ。興味はあるが 誰が買う!
北海道の片田舎で 静岡の高校サッカーを買うとは それぐらいのマニア度なのだ
しかも もっと落ち着いて考えてみると カウンターに行って店員さんに
「静岡の高校サッカーありませんか?」 と聞いたとする。その時の店員さんの
リアクションは間違いなく 「へ?」 だ。 「あっ あれですか」 じゃなく
「…へ?」 だ。
そうなるに決まっている。「この人 何 言ってんの?」 的な顔になるはずだ。
これは ある意味 恥ずかしい。アダルティックな本を買うより ずっと こっ恥ずかしい。
そう思った瞬間急に聞けなくなった。結局この正月に買うのは諦めざるを得なかった
「静岡の高校サッカー」 という本は オレ的にピンポイントだったが
北海道の片田舎では 「かなりマニアックな方ですね」 と思われてしまう本なのだ。
「静岡の高校サッカーが大好きだ」
それは サッカーファンにとって不思議ではない事だが 時と場所によっては
かなり痛い人と捉えられて仕方がない。局地的な愛着は 時として 暴風に晒される
店員の目が カミさんの目が 友人たちの目が 時々メッチャ冷たいのを感じるのだ
「あの選手はさぁ ○○高校出身でさぁ 選手権に出てさぁ」 と そう語るたびに
人が引いて行くのを感じる。すぐ隣にいるはずなのに サーっと引いて行くのだ。
その寂しさは分かるまい。同じ痛い人にしか 分かるまい。
「静岡の高校サッカー」 は そう自覚させる本であり 同時に 勇気も与えられた。
この本が出版される事とは すなわち 「オレと同類の人がたくさんいること」 なのだ
「日本の いち県の 高校の 選手権に限った本」 そんなマニアックな局地点に
魅了されてる蹴馬鹿野郎どもが オレ以外にも多くいる事を確信できたのだ
それが どれほど心強い気持ちになったか…この本が存在するだけで有難かった。
後は この本を必ずや手に入れる。それが この正月に課せられた使命だった。
そして一昨日 オレはとうとう手に入れた 「静岡の高校サッカー」 を。
札幌へ戻った2日後。いよいよもって このお宝を入手したのである。
もう そこらの書店を信用しなくなったオレは 迷わずコーチャンフォーへ行った
「コーチャンフォー」 …しかし変な名前だ。なぜ書店がこんな名前を付けたのか?
正式名称は 「Coach & Four」 で 四頭立ての馬車 という意味らしく
「書籍・文具・CD・ミスタードーナツの4つの業種を柱とすることから名付けた」 と
されている。だが オレらパンピーには どうでもいい事 しかも意味が分かりづらい
イメージ的には 「コーちゃんが フォー!」 なのだ。吉原がフォーか?今さらHGか?
そんな事を考えつつ 本を探した。最初 スポーツの専門コーナーへ行ったが ない。
まさか?と思った。コーちゃんフォー!!に無ければ もう絶望的だ
それだけは免れたかった 新年早々絶望だけは。必死で探した 探しまくった。
と その時 「もしや」 と思い 一般のスポーツ雑誌コーナーへ行った
あった。まぎれもなくあの 「静岡の高校サッカー」 が。
その喜び そして感動は 忘れもしない。
あの時の感情を一言で言い表せば 「ピャー!!!」 だ。
そんな表現で理解されるはずもないが 「ピャー!!!」 だ。
そして ピューっとレジへと向った。ピャーっと来て ピューっとレジへ向ったのだ。
おそらく その時オレの足は3cmほど浮いていたに違いない 喜びのあまりに だ。
コーちゃん フォー!!で そんな奇妙な人間の目撃談があったならば
それは間違いなく オレの事だ。どうか安心して欲しい。
そして とうとう見つけた 「静岡の高校サッカー」 は 喜びと同時に
大きな安堵をもたらせた。それは ようやく見つけたからではなく
「一般のスポーツ誌コーナーに置いてあったから」 である。
そうなのだ この本は決して マニア向けの本じゃない。
普通のサッカーファンが参考にし 楽しむ本なのだ。
そのコーナーに 普通に置かれてある この本を確認した時
「なっ」 と思った
何が 「なっ」 なのかは分からないが とにかく 「なっ」 と言う顔をカミさんに向けた。
そして一冊を手に取り 堂々とレジへ向った。もはや気恥ずかしさなど ない。
オレは めっぽう痛い人ではなく ごくごく普通の 単なるいちサッカーファンとして
この 「静岡の高校サッカー」 を購入するだけなのだ。今のオレは痛い人ではなく
むしろ全然 痛いくない人である。この本を堂々と購入する ごくパンピーな人なのだ
代金を支払い 一目散に家へ帰ったのは 言うまでもない。
帰ってからは 「おぉ!」 「なに!」 「ほほぅ」 の連続である。
あんまりにもハイテンションで説明するオレに カミさんはドン引きの日々だ。
それほどまでに この 「静岡の高校サッカー」 には お宝が満載されている。
あの選手の高校時代が!あの人の今が!あの勝負には こんなドラマが!
あらゆるツボを刺激する 「静岡の高校サッカー」 この本は まさしくお宝である。
オレと同類の ごくごく一般的なサッカーファンの皆さま 必見です。
買う時に気恥ずかしさなど何もない 全然 痛い人とは思われない この本
興味のある方は ぜひぜひ コーちゃん!フォーー!!!へ。
一般のスポーツコーナーに置いてあります。定価¥1200で。
あー良かった。
オレ マニアックな人間じゃなくて。
そう思えた今年の正月だった。
ただし ここでひとつご報告する事がある
昨年の正月 全くの同じパターンで 一冊の本を購入していた
それが これだ↓
「我が心の選手権」
やはり オレは マニアックな人かもしれない…。