クライトンは 札幌で 唯一のプロフェッショナルだった。
プロサッカーを 「競技」 として捉えるか 「興行」 として捉えるか その捉え方で
随分と世界観が変わってくるだろう。例えば 競技に重みを置いたなら
懸命さや汗みたいなものを求めるだろうし 興行なら 「魅せる事」 を求められる。
端的に言えば 選手をアスリートと見るか パフォーマーと見るか だ。
そうした意味で クライトンは プロのパフォーマーだった。
ボールキープという特技を持ち 観客を盛り上げるパフォーマンスをする
またファンサービスには常に笑顔で応えた。これら全てプロとして不可欠なもので
常に観衆の視線を意識する 「プロフェッショナルな仕事」 と言えるのだろう。
残念ながら まだ日本人にはこうしたタイプは少なく サッカーのプロとしては
まだまだ未発達な分野なのかもしれない。また観客もアスリートとして伸びる事を
求めても パフォーマーという意識は薄いように思う。だから未達が遅いのだろう。
個人的には 「サッカーが上手いだけじゃ プロではない」 という持論がある。
選手は観衆の目を意識しながら プレーするのが仕事 という前提があって
それを意識してるか してないかで かなりプレーの質が違う思っている
その意識のある選手は 必ず個性を持とうするし 持った個性を発揮しようとする
するとプレーに “華” を持つ。この意識こそが プロとして大事なものに思うのだ。
ボールを蹴るのが上手いだけじゃプロじゃなく その先に何を持ってるか?
そこで何が出来るか?それを表現してこそのプロ。というのが持論である。
そうした意味においてクライトンは札幌で唯一のプロだった。
だが そんなクライトンが札幌において 全てが素晴らしかったか と言えば 違う。
プレースタイルが 旧来の南米型のため ボール離れが遅かった。
今の若いブラジル人は欧州を意識するため ボール離れをかなり早い。
パスサッカーに応じたプレースタイルを考慮しつつ 個人技を磨いているのだ。
だが 旧来もしくは 南米だけでプレーする選手のほとんどは クライトンのように
ボールを離さず 良い体制になってから パスやシュートに持ち込んでいる。
こうしたプレーは チームほとんどの選手がそうであるため 特異な光景ではなく
むしろ 南米の 「相手選手を抜く=目の前の困難に立ち向かう」 という風習では
賞賛されるのだから 不思議ではないプレースタイルと言えるのだ。
がしかし ここは日本。個人技より 組織に重みを置くリーグでは 噛み合わない。
大きなチャンスを ひとつふたつテンポが遅れる事によって 潰す事が多かった
また そうした事が多くなればなるほど チャンスでのタイミングが掴みづらくなる
どこで離すか分からないから 飛び出すタイミングや パスを受けるタイミングが
分からなくなっていたのだ。そんな悪いスパイラルが ここ最近 特に表れていた。
また チームとクライトンが合わなったのは 「若さ」 と言う面もあるはずだ。
今年 上里がキャプテンになった事で象徴される様に チームの基盤は若くなった
だが どこか遠慮がちな若い選手は クライトンの存在を無視できなかったのだろう
監督は そうならないように色いろ考えたと思うが 選手たちが実践できなかった。
結局 常にクライトンを頼るチームになってしまい となれば 玉離れの悪さや
タイミングの掴みづらさが組織サッカーの妨げになっていた。もし若い選手たちに
もっと大胆なプレーがあれば もしくは 強い勇気があれば チームはもっと潤滑に
回っていただろうし 何より クライトン自信が違っていただろう と思う。
結局 突き上げる若い力が不足したから クライトンがクローズアップされたのだ。
だから ここからだ。ここからが 本当のチーム作りになる。
上里と西が どれだけ責任を背負えるか。
岡本 宮澤 藤田が どれだけプロになれるか。そこに掛かって来る。
一人の選手の退団を他人事じゃなく 「なら自分は何をすべきか?」 考えてほしい
クライトンにはなれないが クライトンから学ぶものはあったはずだ
それを 一つでも自分に身に付け 試合で発揮してほしい。
クライトンは 本当のプロフェッショナルだった。
サッカーを仕事と意識し えげつないほどのプロ根性があった。
また 昨年はブラジルのシーズン中に呼ばれ そのまま札幌でプレーした
それは1年を超える期間プレーし続けた事になる。それでも疲れは見せなかった
足の痛みも大きかったはず だが試合中はそんな素振も見せずプレーし続けた
全ては 仕事だから。 それで 飯を食っているから。
クライトンには そんな仕事に対する執念みたいなものを感じていた。
若い選手たちは どうか吸収して欲しい。じゃなければ もったいない。
あれだけのプロ意識を持った選手が すぐそばにいたのだから。
コーナーキックの時。
その選手はコーナーに 向かいながら
両手を広げ 上下させる
もっと応援を!
サポーターは 煽られ 大きな声援となる
その瞬間が たまらなく 好きだった。