友人Aさん。知り合ってから もう10年近くになる。
元コンサドーレの選手 “岡田佑樹をしぶとく応援する会” が結成されたのが
彼が札幌を出て1年も経ってからで それが知り合った切っ掛けだった。
メンバーは女子4人と自分(おっさん)1人。何とも間抜けなタイミングで
年齢・性別もバラバラな集団になった。それでも5人の結束力は固く
今もスタジアムや食事会などで ちょいちょい会っては 何かしらの手土産と
何かしらのパワーを分け合っていたりする。
もちろん 今やカフェのマスターになった岡田佑樹の事は現在も応援していて
”この しぶとさはそんじょそこらのもんじゃねぇ” と感心するのであった。
そんなメンバーのAさん。
某郵便局的なもののスタンプを収集する という実にマニアックな趣味を持ち
普段からやや早口でやや高音だが テンションが上がると更に早く高音になる
という特技を持っていて そのテンポが心地よく楽しかったりする。
また情報集積力が非常に高く 新聞の片隅やテレビでチラッと流した情報さえ
しっかり集約し かなり古い出来事も すんなり披露する という人である。
特にサッカー関連には強く 20年前の高校選手権をスラっと喋られた時には
高校選手権マニアを自負する俺が 完全に打ちのめされた気になったものだ。
そんなAさん 仕事柄 繁忙期は”地下鉄で帰るのがやっと”の状態になるそうで
それでも人の良い彼女の事だから アレコレお願いされ 厄介な事も頼まれ
損な役まわりと知りつつも 引き受けて来たんだろうなと思う。
ただ どんなに忙しくても どんなに険しくても
コンサドーレと岡田佑樹を応援する事は止めなかった。
地元にいない選手を応援し続けるのは簡単じゃなかっただろうし
日曜日スタジアムにいることさえ 彼女にとって簡単ではなかったと思う。
それでも 彼女は続けた。 仕事を頑張り 情熱を絶やさず 応援し続けた。
そこにある ″我慢強さ” が 彼女 最大の魅力なのだ。
だが そんな我慢強さが 彼女にとって仇になったかもしれない。
Aさんが 癌になった。
去年の大晦日 Aさんからメールが届いた。
そこには年末のご挨拶と一緒に ”手術をした” という報告がされていた。
昨年は体調不良に悩まされ続け いろいろ検査もしたが不明だったそうで
いよいよ限界と思い病院に行ったところ 癌と診断された と。
いつもの 普通のメールと思って読んでいただけに ショックは大きかった。
”癌” という言葉に敏感になったのはいつからだろうか。
テレビのドキュメンタリーや 芸能人が癌になったというニュースを見ると
いつの間にか目を背けてしまうようになっていた。
”もしカミさんがなったら” あるいは ”もし自分が” そんな思いが起こり
とても正視できるものではなくなっていたのだ。そんな数年が過ぎたある日
姉が癌になった。
一昨年の6月。「良い知らせじゃないんだ」と切り出された電話で
自分が癌である事を告げられた。 怖がっていた事が現実になった。
ただ 姉はとても強い人で ”この癌は必ず治す” と決意していたし
自分も ″必ず治る” と確信していた。とはいえ肉親の一大事に何もせず
ただ頑張れというものでもない。″いま自分ができること” として
他の病院で もう1回 検査してもらうために 取りあえず金を送った。
それ以外に何かできる事は?と考えたが 医者でもない 近くにいない自分が
してやれる事は限られている。そうして考えた末 できる事のひとつとして
このブログを更新しない という選択をした。
ブログの更新と癌に何の関係があるのか?と思うが 単なる願掛けであって
他に深い意味はない。ただ ”願を掛ける(懸ける)だけの価値のあるもの”
じゃなければダメだと思ったのだ。 たかがブログであっても 自分にとって
それだけ情熱と労力を費やしたものだから 懸ける価値があると思ったのだ。
1か月後 姉は手術を終えたが その3か月後には5ヶ所への転移が見つかった。
医者から呼び出された姉は「正直 余命宣告されるかと思った」そうだが
「早期なので治療で治る」 と言われ ホッとしたらしい。
それでも癌は癌。それも5ヶ所にも及ぶものだ。簡単なものじゃない。
治療が長く険しいものになる覚悟は 本人も家族もできていたのだろう
それから数か月おきに来る報告は少しずつ徐々にだが 回復に向かっている。
ひと昔前 癌と言えば最悪の事態を予想したが 今は違う。
手術をし 治療をし 的確な薬により 克服が難しいものではなくなった。
だから Aさん がんばろう。
大丈夫なんて軽々しく言えないけど 大丈夫。
あなたが今まで頑張って来た事や 我慢強さや しぶとさや
マニアックな趣味まで きっと あなたの力になってる。
怖くなる時もあると思う 苦しい時もあると思う
それでも それを乗り越えられるだけの力が 備わってるから。
そうして ひとつひとつ壁を乗り越えて
健康と日常を取り戻そうや。
癌のために願を掛け 癌のために願を解く。
姉の事は まだ油断してないが ブログを更新するのに十分な理由である。
すっかりサビついた文章力だけど 少しでも力になっててくれれば と願う。
そして いつか必ず来る こんな日を想っている。
数年後 C2カフェにて。
J 「 コンサドーレ J1優勝にカンパ~イ!」
全 「 カンパ~イ!」
Y 「 いや~ 優勝なんて ねぇ」
K 「 いつコケるかって心配しましたよー」
A 「 いや~ほんと 良かった~~」
オレ 「 そういえば Aさん 体の方は大丈夫なの?」
A 「 あ ぜーんぜん。 すっかり大丈夫みたいです」
Y 「 あの時は ほんと心配したー」
全 うんうん
オレ 「 ま すっかり忘れてたけどね」
きっと そんな日がゴールになる。