明日 行われる川崎戦は もしかすると厚別最後になるかもしれないようだ。
ファイターズの移転をコンサドーレで埋まるため 札幌ドーム使用が増え
必然的に厚別の開催が無くなるという事のようだ。天皇杯やルヴァンGLは
やるだろうが リーグ戦については 開催は難しくなるだろうし 寒さや天候に
左右されないドームは道民にとって来やすいスタジアムなのは間違いない。
ただ 厚別には厚別の思い出があって やっぱり寂しい気持ちになる。
厚別は まだ応援やサポーターとは何かも分からなかった時代に みんなが
手探りで コンサドーレを応援し コンサドーレと共に成長した場所である。
最初の頃はメインだけに座席があって 後は芝生のままで 少し傾斜があって
シートに座ってるとだんだん下がったりして それから座席が出来始めて
スタジアムらしくなって サポーターもそれらしくなって 野次が酷かったり
ゴール裏とクラブが話し合ったり 友達が出来たり 熱狂したり 雨や寒さや
いろんな思い出が この厚別と共にある。サポーターの原点でもあるわけだ。
中でも 強烈に残っているのは 25年前の川崎戦。
この試合 厚別が熱狂し そして神話を確かなものにした。
前半を0-2の闘志の見えない戦いで終え 無敗神話が途絶えようとしていた。
だが後半に入ると選手たちの様子が一変し 気迫のこもったプレーが出始める
そしてマラドーナのFKで1点返すと猛攻は更に強まった。だが次の1点が遠く
決めきれないまま終了間際の後半44分 川崎に突き放された。これで1-3。
この時間帯の2点差はほぼ終了に等しい。が その直後 バルデスが1点返す。
2-3 だが残されるはロスタイムの数分のみ。前半の不甲斐ない出来を思えば
ここまで追い上げた事だけで満足だったが チームは違っていた。
リベロのペレイラが上がりCKを得る GKディドが上がってくるのが見えた。
この試合 用があって厚別には行けず テレビで観ていたのだが。
当時 投げやりな生活を送っていた自分は あらゆるものに諦めかけていた。
アンダーグラウンドな世界をグルグル回るような 善と悪の境も無く
そんな中で唯一の光がサッカーであり コンサドーレだった。
そんな時に見たこの試合。絶体絶命 崖っ淵でも諦めない戦いに心が動いた。
ロスタイムで1点返し そして最後の最後 コーナーキックになる。
ゴール前に上がるディドが映った。その時 号泣した。
たかがサッカーの試合で なぜこんなにも涙が出るのか分からなかかったが
後にも先にも 試合であんなに泣いたのは あの時 一度きりである。
”諦めない” その言葉を体現するディドに そしてチームに勇気を貰った。
残り数秒のCKをバルデスが決め 延長戦に入ると もう結末は決まっていた。
厚別は熱狂に包まれ スタジアムやテレビの前の自分さえも ベクトルは
勝利だけに向かう。実況が声を枯らしながら ”バルデス バルデス” と叫ぶ。
延長Vゴール。決めたバルデスは そのまま反対側のゴール裏まで100m走り
看板を飛び越え ユニフォームを脱ぎ そしてサポーターと喜び合った。
今も忘れられない光景である。”厚別神話” を確かなものにした試合だ。
それと もう1つ。この試合で感動したのが フェルナンデス監督の言葉。
0-2で終えたハーフタイムに監督がどんな指示を出すのか気になった。
ポジションの修正か あるいは守備の修正か いずれにしても悪かった前半の
修正点を的確に指示するだろうと思っていた。だが言ったのは 指示じゃなく
男らしく戦え!
当時 フェルナンデス監督は ”チームはファミリー” と掲げていた。
監督にとってチームは家族であり 自分は父 選手は息子たちという事になる
そんな息子たちの不甲斐ない戦いに 父は ”男らしく戦え!” と叱ったのだ。
それが響いたのか 後半から選手の闘志は明らかに違っていた。
もっと戦術的な指示を出すかと思っていた自分には 少し意外でもあったが
たぶん ”その時 一番 必要な言葉” だったんだろうな と思った。
思えば 今のコンサドーレも当時に近い。
ミシャはチームの父であり 選手は父を尊敬する子供たちのようだ。
褒められながら 尻を叩かれながら 息子たちは成長している。
臆病になり掛けても ネガティブになり掛けても 父が勇気づけ 力を与える。
そしてまた闘うメンタルに仕上げて行く。そうして逞しくなっている。
そんなコンサドーレは 明日の川崎戦も きっと勇敢に闘ってくれると思う。
あの川崎戦から四半世紀も経ち 当時を知る人も少なくなったと思う。
勿論 選手は知らないだろうし 自分には関係ない事と思うかもしれない。
それでもこうして繋いで行く事が伝統や伝説になって行くのだと思う。
”俺たちは ここで負けない” その伝説を継承してほしい。
ここで先輩たちが戦い 伝説を残した。それを忘れてない人たちもいる。
そんな厚別だからこそ 無様な姿は見せられないのだ。
ミシャに勇気を貰って サポーターに力を貰って 厚別に後押しされて。
戦って 闘って 順位や戦力や経験も そんなの全部すっ飛ばして 勝ってやれ。
勝って そして最後の厚別に その雄姿を刻み込め!