ふと思う。
2010年 南アフリカのピッチに
中山元気が立っているのでは と。
ここ数年 サッカーを見てて思うのが ”FWの定義” である。
普通に考えれば ”点を取る事” を使命とされるポジションなのだが
徐々にその定義が変わってきてるのではないかと思うのだ。
例えるなら ”点を取る事以外も重要視されて来た” と言うような。
日本代表なら 02年の鈴木 06年の巻のように 得点よりもその他の仕事
守備やポスト または潰れ役などを主に求められる選手が選ばれていた。
オフト時代の中山雅史も それに近い役割であった事を考えると
オフト トルシェ ジーコと歴代の代表監督が 必要性を強調したのだから
やはりこのタイプのFWは ”近代サッカーに不可欠な存在” と言えるのだ。
また Jリーグのチームで言うなら 一昨年の横浜FCがその例になる。
06年 独走でJ2優勝した横浜FCだが その要因に 城彰二の存在があった
それまではどこへ行っても 目立つ事だけをやりたがっていた選手が
横浜に移籍した2年目ぐらいから プレースタイルや意識が変わった
”前線の雑用係り” に徹するようになっていたのだ。
この城の仕事が 当時 独走する横浜FCの原動力だと見ていた。
そして昨年の結果。J2降格と城の引退は 密接な関係があるように思う。
具体的に言うなら ”雑用係を失ったデメリット” とでも言うべきだろうか
それまで明確だったわけじゃないが 失ってみると大きな損失だった と。
こうしてFWにおける役割の変化は ”点を取れない=悪いFW” ではなく
”それ以外の仕事を献身的に行うFWも必要” という意識が生まれた。
この考え方を もう少し先の ”近未来型FW” として考えてみよう。
近い将来 ”FWは得点が使命” や ”2トップは必要” という固定観念が
無くなるのではと思ってる。今はFWに得点も守備も求められているが
近い将来そうした観念は無くなり チームとしてどう点を取るかを
よりシンプルに追求するようになるのではと思う。それを体現するのが
近未来型FWなのだ。
例えば 4-3-3のシステムだった場合 近い将来 FWの役割が変わり
3トップの頂点に この ”雑用型FW” が入ってるのではないかと思う。
最前線からの守備を献身的に行い 相手DFを楽にさせない。ロングボールや
縦パスに対して 必ず競り合い 潰れに徹する。常にこぼれ球を狙っている。
それらの仕事を90分絶え間なく 高精度で続けるFWが 次の主流だと思う。
今現在も そうした流れはあるが 今よりもっと明確に存在価値も高くなると
思うのだ。ただ このタイプがセンターフォワードなら得点の問題が残る。
FWに得点を期待しない以上 どこに求めるか? という事になるのだが
そこで 3トップの両サイド もしくは負担の軽くなった中盤が鍵になる。
そこを得点源とする。FWとMFに求める役割が 全く逆になるのである。
得点を FWに求めず MFに求める。それが次の考え方だ。
要は誰が点を取ってもいいのだから より効率の良い方法を選択するのだ。
ただ もしこうしたFWに守備を求め 中盤に得点を求めるとなったとすると
今ならあり得ないと思える現象が起きる可能性があるのではないだろうか
所属チームでは1得点も取れてないFWが 代表に選ばれる という現象が。
そこで 中山元気だ。この長い長い前フリが 彼のためであることは 言うまでもない。
全然入らないシュート。パスセンス皆無のスルーパス。
だけど 取り合えず当るようになったポスト。 潰れっ放しの潰れ役。
そして どこまでも どこまでも追いかける 前線の超鬼守備。
”点を取る事以外なら 全てお任せ!” の中山元気だ。
実際 昨年の働きは賞賛に値するし あれほど献身的なFWは存在しない。
代表の巻でさえ 中山と比べるとサボってるように見えてしまうのだ。
それだけ中山の働きに「どんだけ頑張るんだ!」と何度 涙したことか。
それほど素晴らしいのだ。素晴らしすぎたのだ。
また中山自身 ”雑用を一手に引き受ける” という意識が高かった
それは月刊コンサドーレ 12月号の対談でも語られている。
「(石井と)2人で出る時に考えていることは
僕が雑用を全て引き受けるので謙伍にはゴールだけを狙ってもらいたい
後ろのヤツが何と言おうと オレは謙伍にそのことを言い続けています」どうだろう この涙なくして読めない言葉。
今時 こんな健気(けなげ)なこと 言えるヤツ いるだろうか。
さすが人生の荒波を越えただけある。 紆余曲折しただけある。
今井翼と同い年だが。
真面目な話し こういった気持ちでプレーする選手は少ないと思う。
ましてプロなら ”目立つ事が仕事” とも言える そんな職業なのだから
他人を引き立たせるための存在など買って出るヤツは まずいないだろう。
だが元気は違う。自己犠牲がチームの結果に結びつく事を使命としている
その精神が 中山元気 最強で最大の武器なのだ。
昨年の彼は その武器を最大限に発揮していた。
最後の最後まで 中山元気の元気たる武器を発揮しまくったのだ。
それが ”優勝!” という結果を生んだのだ。それ以上 何を求めようか!
もはや中山元気に点などいらない!点を取らないでこそ 中山元気なのだ!
あえて点を取らないでこそ元気だ!いかんなく元気なのだ!
献身的な守備と 献身的な精神 この2つがあれば 中山元気の未来は明るい。
日本代表 中山元気
そう 近い未来。2年後の2010年6月。
南アフリカのピッチに 中山元気がいるような予感がする。
ゴールなど目もくれず ひたすらボールを追う元気。
潰れる元気。雄叫びの元気。少し手前でジャンプの元気。顔怖い元気。
でも僕 元気。いろんな元気が絵に浮かぶ。それもW杯の大舞台で。
今日から始まるW杯予選。
代表チームは まだこれから変化をして行くのだろうが その過程の中で
献身的なFWを渇望されると思う。その時 呼ばれるかもしれない。
あっても不思議じゃない。まして監督が岡田武史だ あり得なくない。
また 中山元気は日々成長している。10本に1本はスーパーゴールもある。
練習場でビックリするようなミドルを決める ・・・時もある。
そんな元気の成長を知るだけに ”日本代表” を予感させるのだ。
南アフリカW杯 本大会。そのピッチに中山元気が立っている。
元気の鬼形相守備が冴え渡る。各国代表選手がビビる。
向って来るだけで 5m手前でもクリアボールになる。
日本は常に優位な試合が出来る。そして決勝トーナメントに駒を進める。
Jリーグでは まだ1点も取ってない中山が 南アフリカのピッチで輝く。
それを見ながら国民は ”中山の偉大さ” ”守備的FWの重要性” を強く感じる
その時が ”近未来型FW” の誕生である。
帰国の空港では 中山に歓声があがる。だが大会でのゴールは ”0” だった
そのことについてマスコミが質問をする「なぜ取れなかったか?」と。
その時 中山元気は こう答えるはずだ
ゴールするほど 落ちぶれちゃいないぜ!
近未来型FW 中山元気が 2010年のピッチに立っている。
それは あり得なくも なくなくない 話しである。