昨日の宮の沢
リカバリーを終えた選手たちが引き上げる中 大塚が黙々と走り続けていた。
誰もいなくなったグラウンドを 村田と2人 何週も何週も走り続けていた。
ようやく掴んだ昇格も そのピッチにいまだ立つ事もなく ひたすら回復に向ける日々
「その胸の中はどんな想いだろう」 ふとそんな気持ちになった。
いや 大塚だけではない。今季 多くの選手がケガによる離脱をしている
白線の外側になってしまう気持ちは どんなものなのだろうか
焦りや悔しさ そして恐怖が渦巻いているように思う。
それでも彼らは走り続ける 黙々と いつか再び立つピッチを思い描いて。
「頑張り」 の代償
昨年のコンサドーレ その頑張りは誰もがを認めるところだろう。
あの戦力でJ2を優勝を果たした原動力は 「頑張り」 の他はない と言える。
だが その栄誉と共に それ以上の代償はあった。
「ケガ」 と言う 代償が。
そんな去年の頑張りを刹那的に映す場面が 一昨日の磐田戦に あった。
前半20分過ぎに 中山が倒れた。その瞬間を間近で見ていたが 一つのボールを
相手選手と思い切り蹴り合う状態になったもの。中山は その場に倒れた
軽いものではないのが分る。嫌な予感がし 咄嗟に 「ボール 出せ!」 と叫んだ。
うずくまったまま動かない中山。しばらくして起き上がりプレーは再開された。
「大丈夫なんだろうか」 そんな心配があったが 中山は走る事をやめなかった。
だが 2~3分後 再び倒れる。すぐに出るバツ印。
無理をしたように思う。相当な痛みがあったはずで それが普通じゃないのも
分っていたはず。それでもその事実を受け入れたくないからか 彼はプレーした
何より その試合 中山はキレのあるプレーを見せていた。ポスト・センタリング・楔と
良い動きでチームを潤滑させていた それだけに 「今 ピッチを出たくない」 と
思ったのではないだろうか。だが 中山は無理をし そしてピッチを出る事となった。
それは 「頑張り」 の代償 と言う他にない。
こうした 「代償」 は 大塚や中山だけではなく ほとんどの選手に言える。
昨年 J2優勝を成し遂げた主力メンバーは ほぼ全員 ケガを抱えている。
先日 西嶋の骨折が発表されたばかりだが 長期離脱者を挙げてもその多さに驚く
右サイド・藤田 ボランチ・大塚 右SB・西澤 はいまだ復帰に至っていない。
それ以外も 西谷・曽田・高木は出場するも 復調とは言えない状態だろう
更に中山まで離脱となれば 昨年の主力メンバーほとんどが離脱した事になる。
分りやすく書けば こういうことだ
【07 主力メンバー】
ダヴィ
中山
西谷 芳賀
大塚 藤田
西嶋 ブルーノ
曽田 西澤
高木
ご覧のように ケガで離脱か 何とか出場してる選手ばかりだ。
出場出来ている選手でも ダヴィも数試合休み 復帰したばかり。
唯一と言えるのは芳賀だけだ。その芳賀も おそらく痛みはあると思う。
今月2日の川崎戦では終了間際に接触があり 足を引きずりながら走り続けていた
あの時も 「次の試合は無理だろう」 と思っていたが 芳賀は出場し続けている
それはキャプテンとしての責任感や意地が頑張りを生んでいるのだろう。
こうして多くの離脱者を抱えながらも 先日は2勝目を上げた。
それは新加入の選手や若手の伸びに負う所は大きいのだが 出来るだけ早く
戻ってくる事を願っている。そうしなければ また 「無理」 が起こり 無理な頑張りは
その代償を払わなければならなくなる。それが 「最も危険」 と言えるからである。
ただ なぜここまでケガ人が多くなったのか そこには理由があるはずだ。
そう考えた時 こんな憶測をした。去年 三浦監督になり 戦術が一変した
そのためキャンプではフィジカルトレーニングより 戦術の浸透に時間を裂いたと聞く
それが早くから勝点を積上げられた結果となったのだが その分 体が追いついて
行かなかったのではないだろうか。基軸となる体力が足りないまま
ハードなスケジュールを戦い抜き 溜まる疲労からケガを生んだように思う。
精神的に充実していた分 体に掛かった付加を消化し切れずにいたのだろう。
そうしたツケが 昨年終盤から 今に掛けて出てきているのだ。
人によっては 「フィジカルコーチを充実させるべき」 という声も上がるだろう
私も同じく思うが 客観的に考えれば あの戦力でJ2優勝を果たすとなれば
どこかで必ず無理が生じる。100%以上の力を出さなければ優勝などあり得なかっ
たのだ。例え優秀なフィジカルコーチがいたとしても 何らかの代償はあったはずで
まして強化費に制約がある以上 補強で補うわけにも行かなかったのだ。
今いる選手を消耗しつつ 結果を出す それが残された道だったように思う。
そこには 札幌の背負う宿命や プロスポーツの現実があるのではないだろうか。
今現在のケガ人の多さは 少なからず 「頑張り」 の代償 がある。
頑張って その分の栄誉を手にし 頑張って 頑張り過ぎて 代償を払った。
選手にとって 「離脱」 は小さな事ではない。それは職場を奪われる事なのだ。
生活を懸け 自分自身を懸け 懸命にプレーする事が使命としている
だが そうした結果が 白線の外を走る事になっているのが現実でもある。
それは何か 皮肉めいたな宿命のように感じる。
それでも思う。
ケガを恐れて 腰の引けたプレーをしてほしくない。
ケガを恐れては 三浦サッカーは出来ない。
頑張る事が出来なくては 札幌にはいられない。
残酷な言葉かもしれないが そうあってほしい
昨年 戦った選手たちは 自分の身を削り 昇格を手にしたのだ。
その引き換えは 決して軽いものではなかった
自分自身 と言う代償である。
それを常に見ていてほしい。
今 出場できる選手たちは まだ戻れない彼らを 見ていてほしい。
白線の外側を ただひたすらに走り続ける選手たちを 忘れないでほしい。
そう思う。
今の喜びは 彼らの代償の上に成り立っている。
それは 忘れたくはない。