闘 「よく来たな」
曽 「あ! とぅりおさん! どこの美容室 行ってるんですか?」
という会話があるかどうかは 分らないが いよいよ明日はレッズ戦。
昨年の12月1日 あの昇格を決めた時 思い浮かんだのは
「そうか J1か… と言うことは あのレッズともやるんだな」 だった。
昇格と同時に思い浮かべた浦和と言うチーム
それは すなわち
J1=レッズ という図式なのだろう。
6万人収容の埼スタを埋め尽くすサポーター。居並ぶ日本代表。
J1制覇 そしてアジアの頂点。まさに 「Jリーグを代表するチーム」 となった。
そうした印象が 昇格=レッズ戦 をイメージさせたのだろう。
「レッズはJを象徴するチーム」 そう断言できるほど 強い。
昨年のクラブワールドカップでは ミランを相手に堂々と渡り合った。
日本には もう適うチームなど存在しないかのようにも思えた。
だが 本当にそこまで強いのだろうか。
思い出すのは2000年。それは暑い夏の夜のこと。
晩飯に何を食うか迷うも 食欲が出ず サラっと食えるものしようと 家を出た。
向ったのは 住んでたマンションのすぐ隣 「あずま亭」 という 蕎麦屋。
ドームからほど近い この店の蕎麦は実に美味く 食欲のない時でも
ここの蕎麦だけは食えた。中でも 天重セットは 「絶品」 と呼べるほど美味かった。
ガラっと店の戸を開ける。狭い店内には客が1人。女将はテレビを見ていた。
どこに座るか見渡す。視線をズズっと回す。空席とたった一人 蕎麦をすする客。
視線が店の端まで行く。 と その時 何か引っ掛かるものがある。
何だ?もう一度 ゆっくり逆周りで視線を移す。蕎麦をすする客の所で一瞬 止まる。
ん?見たことある。あの顔は。 …誰だ? 誰だっけ…?
あの寂しげな肩。少し泣きそうな眉。明らかに後退中のおでこ。
あっ
田渕だ。
そう そこで ただ一人 蕎麦をすする客は 田渕だったのである。
家が近いのか ここの蕎麦の評判を聞きつけて来たのか 分らない
だが 正真正銘 あの田渕龍二である。
ビックリした。まさかコンサドーレの選手が こんな身近な店に来るとは。
だが まったくドキドキしなかった。なんせ田渕である。
そして田渕を発見できる自分にも驚いた。なんせ田渕である簡単に分る人は少ない
他に客がいなかったからいいようなもんの 人ごみの中なら完全に紛れる田渕である
有名人オーラを一切 放たない田渕である だが 完全に田渕と認識した。
そして 田渕を確認しながらも 少し離れた席に座る。女将が注文を聞きに来る。
何でもよかった。もう飯どころではない。田渕とマンツーマンの店内だ。
だが ワクワクしなかった。なんせ 田渕である。
注文をして蕎麦が来るまでの間 スポーツ紙を読んだ。でも読んでなかった。
田渕の蕎麦をすする音だけが店に響いた。 しーん…ズズズ …しーん…ズズズ
思い切って声を掛けようと思った 「明日 頑張ってくれ」 と。
だが躊躇してる間に 田渕は蕎麦を食い終えた。席を立つ田渕。迷うオレ。
レジで勘定を済ませる田渕。まだ迷ってるオレ。 ガラガラッ …ピシャ
田渕は去ってしまった。
結局 声は掛けられなかった。だがそんなに後悔はしなかった。なんせ 田渕である。
翌日の厚別。田渕はズバっと決めた。
前日 マンツーマンで蕎麦を食った男が 浦和を相手に 決めてくれた。
2-1の逆転勝利でこの試合を終えた時 何かとてつもなく誇らしく思えた。
一緒に行った仲間にも自慢した 「オレ 昨日 田渕と同じ店で蕎麦 食ったんだぜ」 と
だが 誰も誉めてはくれなかった。なんせ田渕である。いや田渕は悪くない。
今 思えば2000年のレッズは レッズであってレッズではなかったのだろう。
高原も阿部も達也も相馬も梅崎も あの闘莉王さんもいなかった。
そして札幌にはエメルソンがいた。力関係なら 勝っても不思議ではなかったのだ。
だが 今はどうだろう。こっちはJ1に しがみ付くのが精一杯なチーム
向うはJ1の頂点に君臨するチーム。どう贔屓目に見ても勝ち目はないように思う。
だが本当だろうか。 レッズは最強で 本当に弱点などないのだろうか。
いや ある。必ずや付け入る隙はある。
例えば 闘莉王さんの頭髪なんかどうだ。実は攻めるべき箇所ではないだろうか。
水戸時代 まだハタチそこそこにして すでにお疲れの様子だった闘莉王さんの頭髪
それがいつの間にか素敵なストレートヘアに変わっている。あれは絶対 怪しい。
ああいう所こそ 攻めに攻め続ける箇所ではなかろうか!
2000年の田渕は頑張っていた。ギリギリの状態でも頭髪は誤魔化さなかった。
そうした頑張りが あのゴールを生んだ と言って過言ではないだろう。
だが 闘莉王さんは違う。何か誤魔化している。そこに 「隙」 があるはずだ。
コンサドーレの選手諸君は ぜひぜひ そこら辺を注意深く観察し
弱点と判断するな否や 一気に攻め立てていただきたい。
まず手始めに 曽田が 「どこの美容室ですか?」 と聞くべきだ。
闘莉王さんは 必ずや 動揺するはず。それが勝利への手掛かりになるのだ。